菊池史子滞在制作日誌2024年9月
「滝の上の人たちは地域の子供たちの名前なら全部知ってる。子供たちのことは町全体で面倒をみて育てる。」
2017年のインタビューで印象深かった工藤さんの言葉だった。
今年も9月10日に開催された滝ノ上神社のお祭りは、前日に旧滝の上小学校(現滝の上生活館)で滝の上の子供なら無料で楽しめる屋台が連なる子供天国、当日には演芸会で、民謡やビンゴ大会、代々続く青年部による演劇というレパートリーだった。
今年はその演目の一つに工藤さんが地域の人達と話し合って、校歌の合唱を加えてくれた。
ステージの上はその昔“滝の上の子供達“だった大人たちでいっぱいになる。
校歌が再び校舎を包みこみ、このかけがえのない一瞬は私を温かい気持ちにした。
校歌が地域の中で歌われ続け、人々の気持ちが閉校以前の時間へとタイムスリップしたようだった。
生き生きと歌い終わった多様な世代の元子供達がステージから降りてくる。
この校歌を歌う姿を撮影することが今回の滞在の目的であり、現地での最後の仕事になった。
たくさんの参加者と協力者で作り上げたこのプロジェクトが色々な人に見てもらえるように、私は私の仕事を展覧会に向けて一生懸命続けたい。
そして夕張の街から私が与えてもらったことに対して、なんらかの恩返しができればいいなと思うばかりだ。
(文・写真/菊池史子)