菊池史子滞在制作日誌|6月5日(月)
「何小学校出身ですか?」
と清水沢プロジェクトの佐藤真奈美さんが会う人会う人に質問してしまうのは私のせいだ。
彼女は私が夕張で活動していない期間でも夕張市内で出会った人、片っ端から出身小学校を聞いてくれている。
人づての情報を元に卒業生を探す私たちは時には一歩進んで二歩下がり、最短距離で届く場所でも紆余曲折しながら目的の卒業生に向かっている。
そんな私たちが暖かい時期に制作することは初めてで、素晴らしい自然の合間に、自ずと白い箱や茶色の箱、オレンジや緑の看板が目に入ってしまう。
その度に丸くて甘いあの果物を意識せずにはいられない。
私はその丸くて甘いあの果物やThe炭鉱と言われる素材に直接飛びついたことがない。
そんなメジャーな素材に簡単に飛びつくことにすら抵抗感すら覚えてしまっている。
そんなことを考えながら、悶々とした時間が流れる。
今日は宮前浴場である小学校の卒業生と待ち合わせをしている。
”清水沢プロジェクト”と書かれた手ぬぐいを片手に出発。
「近所の大人は面倒見が良く大らかだった。昔は誰の子供でも構わず面倒みたんだよ。今じゃそんなことしたら逆に怒られるもんね。」と当時の様子を語る。
私は昔と今の違いを見つめることが未来を見つける手がかりになるような気がして、彼女たちの話を忘れまいと耳を澄ました。
(文・写真/菊池史子)