菊池史子滞在制作日誌|6月6日(火)

夕張に入ってから私はどうやら公私混同してしまっていたようだ。
そうだ、食べたらいいんだ夕張メロン。
メジャーな素材に飛びつくのに抵抗があるのは作品制作の時であって、私生活で何を食べるかは制作とは無縁にすればいいのだ。
そうだ、普通に買おう。

国道沿いでメロンを売っている真谷地西小学校出身の店員さんから滝の上小学校出身の工藤さん(2019年参加)と富野小学校出身の武岡さん(2020年参加)が作った明後日食べ頃になるメロンを買った。
途端に悶々としていた気持ちが晴れていろいろなところに余裕が出て来る。
顔に当たる風はいつもよりも暖かく感じるし、見ている景色が一段と綺麗に見えた。
私は明後日、夕張メロンを食べるのだ。
浮き足立った私は今までお世話になった方々に挨拶して懐かしい顔を見るたびにどんどん元気になるのだった。

「いた!清陵小の卒業生!」佐藤代表の元に街の協力者から吉報が入る。
断られることに免疫のついている私たちに「信子ちゃんなら絶対やってくれるよ!」の言葉は力強かった。
夕暮れ、信子さんと落ち合ったときに「じゃあ市内に残ってる卒業生にも声かけておきますね!」と嬉しい言葉。
参加者本人が広げてくれる輪がこのプロジェクトを豊かにしてくれる。
たくさんの恵みに感謝しつつ私は健やかに広がるこの輪に身を託すのだった。

(文・写真/菊池史子)